その他の信託

事業承継信託

オーナー株主である社長が認知症等により成年後見人が選任された場合には、株主総会で議決権を行使する人がいなくなるため、新たに役員を選任することができなくなります。また、事業承継は相続税対策だけではありません。経営権の承継のためには、名前のとおり経営する権利と経営者としての義務を引き継がせる必要があります。
そのため、後継者を株式の受託者とし、総会の議決権は受託者に行使させ、利益配当は受益者として会長が取得します。そうすることで、会長が認知症になった場合でも、会社の運営は滞ることがなくなります。

共有関係の問題解消のための信託

相続などで共有関係になってしまった不動産の管理処分に有効な方法です。
共有状態の不動産を他人に貸したり、売却したりするためには、共有者の全員が同意する必要があり、手続きに参加していただく必要があります。そのため手続きが煩雑になることもあり、また共有者の中に認知症の方や、高齢で寝たきりの方がおられると、手続きを進めていく障壁となる場合も考えられます。
そんなとき、各共有者全員が、共有者の一人を受託者として信託契約を締結し、受益権を各共有者が共有持分権に応じて取得しておくことで、手続きの軽減を図ることができます。また、長期的運用を考えておられる場合には、受託者として共有者全員が社員となる一般社団法人などを設立することで、共有状態のまま、各共有者の相続人に信託した不動産の利益のみ分配を受けることもできます。

家督相続信託

「先祖代々引き継いできた不動産を、これまでどおり直系の家族に引き継いで、守ってもらいたい」と考える方にも、信託の仕組みを使うと実現することができます。また、信託契約時にはまだ生まれていなくても、先祖代々守ってきた不動産をまだ見ぬ孫やひ孫を将来の受益者として設定することも可能です。

※受託者(管理者)が死亡したときに備えて次の受託者を決めておくことも可能です。

死後事務・遺産整理信託

葬儀や遺品整理は原則として相続人である親族が行います。
ただ、近くに親族がいない場合は誰がその死後の事務手続きを執り行うか大きな問題になります。そのため、信託の仕組みを使うことで、近くに住んでいる遠縁の方や友人等に葬儀などの手配や遺品整理、その他必要な相続の届出などの手続、空き家となった不動産等の処分を任せ、必要な経費を遺産の中から支払ってもらい、その残った遺産を親族やお世話になった人に引き継いでもらうことが可能となります。